わざわざ訪ねたくなるような公設図書館が全国に増えています。建築物として眺めて美しい、カフェ併設でくつろげる、など特徴はさまざまで、住民でなくても入館や閲覧は可能です。読書の秋、居心地の良い図書館を巡る「旅」はいかがでしょうか。

過ごすだけでも

 東京から北陸新幹線を利用して約2時間半。クリで有名な長野県小布施町の町立図書館「まちとしょテラソ」は、2009年にオープンしました。信州の山並みをイメージした曲面の屋根がユニークな建物で、蔵書は9万6,000冊。人口1万人余りで書店が一軒もない町の図書館に、昨年は14万6,000人が訪れた。「そのうち貸し出し人数は延べ2万9,000人。つまり12万人近くは『借りる』以外の目的で来ている」と、関良幸館長は説明します。勉強やイベントのため利用する住民、建物を見学する建築学科の学生、そして旅行の途中で立ち寄る人々。目的はさまざまです。

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△出典:毎日新聞

 館内には静かなBGMが流れ、少々の会話も許されています。間仕切りがないため、絵本の読み聞かせスペースから閲覧席まで音楽や手拍子が聞こえてくることもあります。閲覧席にはペットボトルなどふた付きの飲み物が持ち込み可能で、飲食できるテーブル席も。「静寂さを大切にする調査研究のための図書館でなく、交流の場でもある開かれた図書館を目指しました。これまで来なかった人たちが気軽に訪れるようになり、毎日来る人、一日中いる人もいる」(関館長)。従来の図書館になかった自由度の高さ、居心地の良さが人気の秘密です。

 名称の「テラソ」には、文化の拠点施設として町や地球(ラテン語でテラ)、未来を明るく「照らそう」という願いが込められています。町内には酒屋、みそ屋、カフェなどが本棚を公開、仕事に関する本などを並べた「まちじゅう図書館」が15軒あり、訪ね歩くのも楽しい。

併設カフェでお酒

 東京都武蔵野市の図書館「武蔵野プレイス」は、建物外観をはじめ窓、椅子などの丸みを帯びた優しいデザインが特徴。JR武蔵境駅から近く、朝は開館前から行列ができる人気施設です。生涯学習や青少年活動などの拠点でもあり、年間利用者は約175万人。1階には600タイトルの雑誌、30紙の新聞を読みながらくつろげるカフェがあり、午後5時以降はメニューにアルコールも加わります。

 青少年の居場所として開かれた地下2階にヤングアダルト、芸術系の図書を置いたり、児童書・絵本と生活関連の本を同じ2階に配置して親子が一緒に読書を楽しめるようにしたりと、年齢層や目的でフロアを分ける工夫がされていて、それぞれの空間はらせん階段や吹き抜けで緩くつながっています。「サークルの打ち合わせをして、本を探して、カフェでお茶を飲んで、と利用者の目的はいくつもある。夜10時まで開いているので滞在時間も長い」と加藤伸也館長は話します。

地域知るきっかけ

 「だから図書館めぐりはやめられない」などの著書がある常磐大非常勤講師の内野安彦さん(60)は「私は塩尻市立図書館(長野県)館長のとき、入り口わきの目立つ場所に郷土資料の棚を作った。町の特色を棚に『語らせる』のが目的で、初めて訪れる人を意識した」と経験を語ります。「図書館は土日も開いていて立ち寄りやすく、市役所より開かれた観光窓口。ほとんどの図書館は『観光客ウエルカム』なので、気軽にのぞいて地域を知るきっかけにしてほしい」と勧めています。